Mercerdes-Benz E320 (W124)

W124と呼ばれるE320です。メルセデスのシャーシ・コードでいえば 124.032。1994年から1996年にかけて製造されました。これはの最終型で色々な意味で熟成がされています。エクステリアデザインを担当したのは、当時メルセデス・ベンツに在籍していたイタリア人、ブルーノ・サッコ。サッコはW126(Sクラス)、W201(190)に続いて、このW124をデザインしましたが 環境性能や実用化を際立たせた設計は当時から賛否両論でした。


W124は全世界で累計 2,562,143台製造されました。最初の呼称は”ミィディアムクラス”でしたが、途中から”Eクラス”に統一されました。フラッシュサーフェイス化にも取り組み、標準モデルの空気抵抗係数(Cd値)は 0.29になっています。マイナーチェンジは4回。この個体は最終形ですので結果的にサッコが当初「むき出しの樹脂」で設計したフロントとリアのバンパーもボディ同色のものになっています。


  • ボディタイプも非常に多彩で、5種類(4ドアセダン、5ドアステーションワゴン、2ドアクーペ、2ドアコンバーチブル、そして6ドアリムジン)ありました。個人的に衝撃だったのが6ドア、8人乗りのリムジン。まだその車を販売していた当時、小僧だった自分は、車雑誌でその存在を知り、度肝を抜かれた記憶があります。しかもよくある工房でストレッチしている改造車ではなく、メルセデス本社がきちんとつくったリムジンということで、そんなものも作る会社ということにビックリしました。

W124が現役だった時代は、日本ではバブル真っ盛り。派手できらびやかな面白い日本車がどんどん発表され、それはそれで楽しかったのですが、そんな時代に環境や実用に配慮した、基本に忠実、シンプルで端正なデザインは、逆に強烈な存在感を放っていた気がします。


さて、さて、その走りですが・・。この車を知る誰もが言うように、その剛性感が例えようのないほど素晴らしいのです!!ボディ全体に包まれていると言いますか、どんな挙動をしてもそれをしっかりと支える強い車体に包まれている安心感は、本当に素晴らしいです。


その剛性の高さを特に意識できるのが、やっぱり高速走行時。比較的高い速度域でも不安になることは全くなく、真っすぐ走って行きます。ハンドルの動きと車体の動きも非常に明確で、ドライバーが意識したラインをスーッとトレースしていく感覚は何とも言えません。


トヨタがレクサスを立ち上げる時、開発のベンチマークの一つがW124だったとの話も聞きましたが、確かにこの車の直進走行性の安定感、素直なハンドリングはそれまでの日本車では決して味わえないものだと思います。


リアのコンビネーションランプ類には凹凸が付けられていますが、これは仮に泥や雪が付着しても視認性が落ちないように、という設計の一つ。W124より以前のW123などはもっともっと激しい凹凸が付いていましたが、道路事情が改善したということなのか最近のモデルには無くなってきてしまいました・・・。



運転席周りを見てみましょう。バブルの時代で、日本車のインパネがキラキラ、ピカピカしていたころの車とすれば恐ろしくシンプルです。Das Beste oder nichts(最善か無か)という哲学がきちんと具現化されているインパネ回り、ということ・・・でしょうか。


一見、普通のハンドル周りに見えますが、欧州車好きがよくよく見ると、おおっーとなるポイントがお分かりでしょうか?右ハンドルなのにハンドルの左側にレバーが何も無いのです!!たいしたことなさそうですが、実はものすごく画期的なこと。例えばVWでもBMWでも日本に輸入してくる右ハンドル車のハンドル回りは、左ハンドル用のものを単に付け変えているため、「ウインカーが左、ワイパーが右のまま」なのです。これはいじわるでもなんでもなくイギリス市場のために意図的にそうしている、ということなのですが、日本で右ハンドルのVWやBMWに乗る人達は「あれ?ウインカーとワイパー間違えた」ということを常にやってしまうのですが(自分だけ?)、メルセデスはそれを防ぐため、ハンドルの片方は空けてあるのだそうです。


計器類は、この時代の典型的なもの。真ん中に大きなスピードメーター。右は回転計とアナログ時計。左はオイル温度、水温、燃料計です。



W214は後期からこうしたウッドパネルの使用が多くなりました。


照明はお約束のアンバー(オレンジ)系。



ATシフトは、ギザギザになっていて、直接の誤動作を防ぐゲート式。より正確に言えば、当時メルセデスが特許を取得していた「スタッガードゲート」です。近年、この特許が切れ、日本車にも一部取り入れられ始めましたが、最近はまたストレート式に回帰している印象があります。



ヘッドライトスイッチです。欧州車の基本のロータリー式ですが、いつものメルセデスのように、フロントフォグ・リアフォグスイッチも兼ねています。左右に回すとヘッドライト、スモールライトの操作。前後に動かすとフォグ・リアフォグの操作になります。



パワーシートの操作スイッチです。シート横にあるため、手探りでも迷わない形状をしています。



さて、エンジン回りを見てみましょう。 日本車に比べて、グワっと大きく開くボンネットもメルセデスの特徴。一説には「故障の時エンジンを載せ換えやすいように大きく開く」なんて揶揄を聞きましたが・・・。


M104と呼ばれる直列6気筒のエンジン。正確には3199mLの排気量を持つ M104.992というタイプです。



最大出力は 231 hp (170 kW) 5500 rpm 。最大トルク 310 N·m (229 ft·lbf) 3750 rpm. ボア 35mm ×ストローク 31mm. このエンジンは W124 や W210 というE-Class。 W140 のS-Class。 W463の G-Class。 R129の SL-Classにも使われています。

ラジエターファンが2基。

ト―イン角、キャンバー角を表示するあたり、メルセデスらしい。

シートは本革ではなくファブリック。個人的にはこちらの方が大好きです。冬は特に、皮シートの冷たさがキライです。(だからこそ本革装備車にはシートヒーターやシート背面ヒーター、首元送風口など意味不明な機能が付く車種もあるのですが)。 そもそも本来はヨーロッパの馬車文化の折、御車が乗り降りするように汚れに強いものとして皮シートが導入された、との話です。それが時代を経て「本革=高級」という価値観になったのでしょう。

ゆったりとくつろげる後席。長距離でも疲れにくい逸品です。



ちなみにリアヘッドレストは・・・

きれいに倒れます。後方視界確保にはとても良い機能です。



リアのヘッドレスト間にはファーストエイドキットが入っています。ドイツの交通法では必須のアイテムです。


メッキパーツも少なく、外見上の派手さがないデザインは、逆に飽きがきません。


乗降しやすく開口部が大きな後部ドア。



設計者、ブルーノ・サッコはトランク開口部の大きさにもこだわりました。斜めに切り込まれ、開口部を広く広くとったのです。その結果、下端もバンパーレベルに近い部分まで下げられ、超広大な開口部になりましたが、結果的にリアのランプ類が小型になりました。



E320のエンブレム。この頃はエンジン排気量とモデル名がきちんと一致していました。しかし、今やBMWも含めて、モデル名と排気量の乖離が激しいです。確かに現在の小排気量+ターボの世界では、設定ブース圧ひとつで出力が変わるので、同じ1.8L+turboという構成でもC180とC250では出力もトルクも違うので、単純に排気量であらわさない方が分かりやすい、ということでしょう。ハイブリッドのレクサスなんかはもっと複雑な事情でしょうし。


 

小さくても存在感のあるエンブレム。ボンネット先方にあるので、ギリギリに駐車するとき、先頭の目安にもなります。

Mercerdes-Benz E320 (W124)

BMWのページと銘打ってあるのに、またまたメルセデスに浮気した話を書きます。
 自分が欧州メーカーに憧れと愛着を感じてしまう理由の一つに、企業哲学が明確で分かりやすい、ということがあります。会社の思いをきちんと製品に貫いていることをエンドユーザーにも感じられるのがすごいと感じます。例えばメルセデスでいえば、Das Beste oder nichts(最善か無か)というフレーズが非常に有名。カール・フリードリッヒ・ベンツ Karl Friedrich Benzの創業時から1990年ごろまで、企業スローガンとして使われていました。最近また少し聞くようになりましたが、このW124と呼ばれる初代Eクラスモデルでも、それを感じます。
1985年から1995年に製造されたこのモデルは、すでに登場から30年近く経っているのですが、未だに高価で取引されている個体があるほど、その完成度は非常に高い車だと思います。 そんなW124に憧れた話をします。