広大な自然・・・。でも、実際に我々が訪れるとなると、外国人旅行者が気軽に訪れられるような施設も情報はほとんどなく、どこに行けばいいのか分かりません。

実際に訪問しようとしても、本当に情報がないのです。それでもネットでよくよく探すと、政府観光局のサイトには、ecoturismo　エコツーリズム体験としてほんのわずかそれらしいツアーがあるようなことが書いてありますが、具体的なことは何も書いてなくて良くわかりません（私のホルトガル語力が弱すぎるのが主因ですが）。どうやら研究機関が学術研究や生涯教育などのために、時折学習用のツアーを行っているようです。

というわけで旅行者のための環境は他の世界遺産サイトとはかなり異なります。正直言って、訪問・滞在は簡単ではありません。

非常にレアな世界遺産サイトですが、どなたかもっと探究して、様子をレポートしていただければ幸いです。

大西洋岸森林南東部の保護区群は、4,700km2にも及ぶ広大な熱帯雨林で、ブラジルの大西洋岸森林としては最大級の森林地帯です。その雄大な自然の中にたくさんの貴重な動植物が生息しているとのことで、パラナ州からサンパウロ州にかけて25の保護区群が世界遺産に指定されています。国立公園はパラナ州のスペラグイ国立公園のみですが、州立公園はサンパウロ州側に6公園、パラナ州に5公園あり政府・自治体も保護しようとしている場所であることが分かります。基本は鬱蒼たる原生林が広がる未開の地で、深い森だけでなく、様々な島々、砂浜や湿地帯など、変化に富んだ様々な自然が広がり、そこにジャガーやアリクイなどの絶滅危惧種も多数生息しています。しかし、16世紀以降に始まった植民地政策による土地開発によって、現在残っているのは本来の姿の１０分の１以下。よってこれら動植物や生態系の保護のためにも指定されたとのことです。

何度も書いてしまいますが、この世界遺産サイト・・・正直言って情報が全くありません。原因は自分の探し方が悪いのと、私のチープな語学力のせいなのでしょうけど、それにしても「具体的にこうやって行きました」「ここに行きました」という情報がネットでも書籍でも全くないのです。日本で出版されている「世界遺産サイト全紹介」系の書籍を見ても「アクセスはサンパウロなどからツアーなど」を書かれているのみ。具体的にどこでどんなツアーを催行しているのかということについて公式な情報、個人のサイト・ブログ・口コミを探してもまともな情報は出てきませんでした。サンパウロにある旅行社の情報を探していても全く見つかりません。
それでも「せっかくならば行ってみたい」と考えた私は「しかたがない。原典から探そう」と、ユネスコのサイト(英文・仏文)の文献や記述を基に訪問計画を立ててみました。
その際に作ったのが以下の「指定サイト一覧表」。でも、これを基に検索してもよくわかりません。とにかく「訪問方法が分からない」というレベルでなく「それがどこにあって、何をしているのか」という情報すら英語サイトでは発見できませんでした。ポルトガル語のサイトならはそれなりに出てきますが、それすら観光客向けの情報はごくわずか。結論としてブラジル政府および州政府は、これらを観光資源にする気はないらしく、旅行者の便宜は図ってないことだけはよく分かりました。

と、文句ばかり言っていても仕方ありません。仕方ないので、再度、指定されている保護区のリストを眺め、25の保護区の一部でも良いから訪れてみたいと計画をたてました。
　下の一覧をご覧ください。多数の環境保護センター（Estaçao Ecologica 英語で言えばEcological Station）が指定されていますので、google先生の地図でそれらの位置や役割を確認し、実際に訪問できそうな場所を検討していきました。でも、そこが一般人の訪問を許可しているのかも不安でしたので、「とりあえず、これらの指定地域のそばに行くこと」を考えました。

「大西洋岸森林南東部の保護区群」として指定されている場所
（日本語訳は筆者が勝手につけた非公式なものです）
出典：ユネスコ世界遺産センターの資料より　http://whc.unesco.org/en/list/893/
【生態系保護拠点（Estaçao Ecologica)】
ガレケ-サバ環境ステーション（Estaçao Ecologica Guareque-Çaba）
シトゥエ環境ステーション（Estaçao Ecológica Xituê）
シャウアシュ環境ステーション（Estaçao Ecologica Chauás）
ジュレイア-イタティンシュ環境ステーション（Estaçao Ecologica Juréia-Itatins）
メウ島環境ステーション（Estaçao Ecologica Ilha do Mel）
グワラグワス環境ステーション（Estaçao Ecologica Guaraguaçu）
【国立公園　Parque Nacional】
スペラグイ国立公園（パラナ州）（Parque Nacional Superagüi）
【サンパウロ州　州立公園　Parques estaduais de São Paulo】
カルロス・ボテリョ州立公園（Parque Estadual Carlos Botelho）
インテルヴァレシュ州立公園（Parque Estadual Intervales）
カルドゾ島州立公園（Parque Estadual Ilha do Cardoso）
ジャクピランガ州立公園（Parque Estadual Jacupiranga）・・・今回紹介！
パリケラーアバショ州立公園（Parque Estadual Pariquera-Abaxio）
アルト・リベイラ州立観光公園（Parque Estadual Turístico do Alto Ribeira）
【パラナ州　州立公園　Parques estaduais do Paraná】　
ラウラセアシュ州立公園（Parque Estadual Lauraceas）
ピコ・ド・モルンビ州立公園（Parque Estadual Pico do Marumbi）
ホベルト・ランジェ州立公園（Parque Estadual Roberto E. Lange）
セハ・ド・グラジオサ州立公園（Parque Estadual Serra do Graciosa）
パウ・オコ州立公園（Parque Estadual Pau Oco）
【野生生物保護区　Reserva de vida selvagem para Estado de São Paulo】
サンパウロ州
セラス　ド　コデルデイロ、パラチウ、イタプア、イチンガ（Serras do Cordeiro, Paratiu, Itapuã e Itinga）
セラスアペヒアード、トンバドァ（Serras de Arrepiado e Tombador）
マウンゲ（Mangues）
セラドイタイアンジ（マンゲイラ）（Serra do Itapitangui (e Mandira)）
オセアニァス島（Ilhas oceânicas）
コンプリーダ島（Ilha Comprida）・・・・今回紹介！
【緩衝地域　Zona tampão　】
カナネイア-イグアペ-ペルイベ景観保護地域（Area de Proteçao Ambiental Cananéia-Iguape-Peruibe）
グワラケーサバ景観保護地域（Area de Proteçao Ambiental Guaraque-Çaba）
コンプリーダ島景観保護区（Area de Proteçao Ambiental Ilha Comprida）・・・今回紹介！
セラ・ド・マア景観保護地域（Area de Proteçao Ambiental da Serra do Mar）
モルンビ景観保護地域（Area de Proteçao Ambiental Marumbi）

どこも大都市から遠い場所ですので、訪問するためにはどうしても宿泊施設が必要です（都会では犯罪者が、田舎では大自然が脅威となるブラジルですので、宿を探しは日本以上に重要）。そこでいつも使っているホテルサイト「Booking.com」や「Expedia」などを使って、上記の場所の近くの宿泊施設を探しました。・・・・でも・・・・ないんですね。泊まれそうな宿泊施設が。原生林が基本だけあって、付近の大都市（パラ州ならば州都クリチバ、サンパウロ州ならば州都サンパウロ周辺）まで数百キロ移動しなくては宿がなさそうでした。
・・・「うう〜ん。やっぱりあきらめるか・・・・」と思った時、上記リストに載っている場所なのに、ホテルが何件かヒットする場所があったのです。それが「Ilha Comprida（コンプリーダ島）」でした。
　そしてもう一か所。全く別の時期ですが、たまたま、この付近を車で走っていた時、前々から気になっていた「州立公園入口」の看板を見て、「ちょっと行ってみようか」となり、フラッと訪れてみました。それが「Parque Estadual de Jacupiranga」の一部である「Parque Estadual do Rio Turvo」でした。よってこのページでは主に2か所の紹介をします。

「Ilha Comprida　コンプリーダ島」はリスト上部の「生態系保護拠点　Estaçao Ecologica」ではありませんが、下部の「野生生物保護区Reserva de vida selvagem 」「緩衝地域　Zona tampão」になっています。google map & Earth で確認すると、遠浅の海岸沿いがローカルなビーチリゾートになっているようです。それならば、世界遺産や自然遺産に興味のない「オチビを連れて行っても、海で遊んでいれば大丈夫」ということで、そのホテルを予約しました。
　Ilha CompridaのIlha(イーリャ)とは島、Comprida(コンプリーダ)とは英語でLong,つまり日本語では”長島”とでもなりますか。島はその名前の通り、大西洋岸に接した細長い島で、本土とは細い橋でつながっています。その橋の近くにイグアペ(Iguape)という小さな村があり、人々が住み、都会からそのビーチに人々が遊びに来ているようですが、橋の反対側（南側）が手つかずで自然が残っているようです。もちろん、その島に行くまでも大自然の中を走るわけで、指定されている自然保護区もいくつか通ります。「もし、自然保護区の施設が見つかったら寄って行こう。無理だったらコンプリーダ島をひたすら目指そう。最悪、海遊びができるだけでも良しとしよう」という軽いプランのもと、とりあえず行ってみることにしました。

サンパウロに住んでいた私は自宅から自家用車で、 高速道路の国道116号線(ホドビア　ヘジスビッテンコート Rodovia Régis Bittencourt( BR-116)）をパラナ州の州都　クリチバ方面に3時間、200ｋｍほど走りました。このBR116は、何度も走っていますが山をくねって通っている場所が多く、しかも一部区間が単車線になっているなど、なかなか運転が面倒な道です。しかもトラックも多く、交通量の割に道が狭いのですぐに大渋滞が起こる道です。と言っても、実はこの道こそが世界遺産に指定されている保護区の近くを通るメインストリート。言い換えれば、「自然の原生林が残っている」という今回の世界遺産サイトの中心を通っている道なので、自然にあふれているのは、当然と言えば当然です。さて、そのBR116をオリヴェイラ バホス (Oliveira Barros)という町で、州道222号（SP-222）に乗り換えます。この道も、まさに自然遺産の中を走る道路で、田舎の細い道ですが、ここを約100km、２時間ほど海に向かって南下すると、海の近くのイグアペ(Iguape)という町に着きます。そこからProf.Laercio Ribeiro橋(有料)を渡るとコンプリーダ島でした。

島のビーチ自体は・・・・。超遠浅の素晴らしいビーチでしたが、多少人が少ないのと、田舎の雰囲気があふれている以外はブラジルの他のビーチと同じでした（爆）。肝心の”自然”ですが、なんてったって、旅行者に開放されていないただの自然ですから・・・。確かに自然は豊富ですが、それを旅行者が堪能できる環境が厳しいため十分に楽しめるとは言いにくい状況かもしれません。
でも後日、サンパウロ地元民と話していたら、コンプリーダ島自体はそこそこ有名で、「州内で半日で行けて、そこそこ静かな田舎ビーチとして、静養に行く人もいるよ」とのことでした。また、とても個人的な事ですが、宿のおばちゃんやまわりの人がとても良い人で（ただでさえブラジル人は本当にフレンドリーで、優しい人が多いのですが）さらに田舎の素朴な方々に出合えてとても心温まる滞在ができました。

　ここからは、上述のように全く別の日の出来事です。かなり遠い場所（サンタカタリーナ州　ブルメナウblumenau のオクトーバーフェスタ）に出かけた帰り道。ＢＲ116を走っていたら、前々から気になっていた州立公園の看板を見かけました。時間的にも余裕があったのでふと訪れてみたらとても良い自然公園でした。結論から言うと、世界遺産サイトとして見ると、コンプリーダ島よりここの方が遥かに自然遺産としての理にかなっており、ブラジル大西洋岸の原生林の自然の一端を垣間見ることができます。滝がメインですが、いろいろ見学地としても整備されていて、ホッと一息できる空間です。ただし、大都市から数百キロ離れた山中の公園。高速道路の脇の道を数キロ山道を車で登るだけですが、入口の看板も小さく分かりにくくて、正直言って車がないと（もっと言うとブラジルは日本の国際免許は認めていませんので、ブラジルで有効な運転免許を日本以外の国で取得し、車を調達して自分で運転してこないと）ここの訪問はかなり厳しいと思います・・・。