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　人類の進化を示すカルメル山の遺跡群:ナハル・メアロット（ワディ・エル＝ムガーラ）の洞窟群
Sites of Human Evolution at Mount Carmel: The Nahal Me’arot / Wadi el-Mughara Caves


【ナハル・メアロット】
ヘブライ語で「洞窟群の渓谷」を意味し、バハーイー教の本部が置かれる場所として知られるカルメル山西側斜面にある渓谷にあります。人類の進化の研究上重要な4つの洞窟、タブーン、スフール、エル・ワド、ジャマルがあり、50万年前からの進化の推移を考える視点においても、そしてネアンデルタール人と現代人とのつながりを考える面からも重要な遺跡とされています。特に、ネアンデルタール人女性の全身骨格によって骨盤の変化を知ることができたり、また出てきた石器など多くの生活痕跡も大変貴重な素材となっています。
４つの洞窟のうち、スフール洞窟とタブーン洞窟は、現生人類の起源とネアンデルタール人の運命に関連するヒトの遺物と加工品の存在によって、人類の進化を研究するうえで貴重な資料を提供しています。 エル・ワド洞窟は、食糧生産と定住生活の初期段階の痕跡によって、世界的に評価されています。ジャマル洞窟では木製・石製の家財道具や皮革製品なども含めて、中期旧石器時代の物質文化の傑出した証拠が発見されました。　
【実際に行ってみた感想】
この場所は結局２つの小さな洞窟を展示しているだけであって、解説を読まず、見るだけであれば10分で済んでしまう内容です。日本でいえば、かなり小規模の遺跡博物館、という感じです。でも、人類史的には非常に重要な場所であり、それが現在も当時とほぼ同じ姿で残っていること自体奇跡であり、大変意義深いことだと思います。同時に、地質学的にも中生代からの露頭（一般的には「地層が見える崖」のようなもの）があり、そこに海の動きの痕跡が残っていることも非常に意義深いことだと思います。

筆者の主観的評価
オススメ度
有史以前の人類の歩みがそのまま残っている遺跡です。文化人類学の概論にはほとんど必ずといっていいほど言及される遺跡です。
訪問のしやすさ
地図を見ていただくとわかる通り、やや人里から離れた場所にあるので、一般的にはバスかタクシーを使うのが一般的です。バスの場合、テルアビブからならば、テルアビブ・セントラル・バスステーションから921番バスに乗車→（所要3時間弱）→Ein Karmel Junction下車→徒歩約12分　というのが一般的のようです。
旅行環境整備
遺跡はしっかり整備されています。でもそれだけ・・・。
総合評価

人類の歴史から見れば重要な遺跡だと思います。でもとても小規模ですので、ご承知の上で。文化人類学や地質学が好きな人にとっては非常に面白いものが見られるのでおススメです。

 

 

 

ナハル・メアロット自然保護区に行ってみよう！　סעו לשמורת הטבע נהר מעלות
ナハル・メアロット自然保護区　の看板
ここが駐車場です。みんな車で来る感じですね。タクシーはもちろん、バスなどは近くでは見かけない気もします。
広い広い駐車場を進んでいきましょう。
すると整備された看板などが出てきます。
後ろに見えるのがカルメル山。この山肌に遺跡はありました。
HOF-HACARMEL　このカルメル山近くの地域の説明版ですが・・・
表面がかなり劣化していてしっかり読めませんでした。

「NAHAL ME'AROT NATURE RESERVE　ようこそ！ここは、気候変動や環境変動にも関わらず50万年間の人類の営みがそのまま残されている貴重な場所です。ここはネアンデルタール人から現代人までの両方に関わる世界で唯一の遺跡です。1万5000年前のNatufian(ネッフィアン)村が、このEL-Wad(エルワッド)洞窟から発見されました。」あとは歩き方だの、飲食だの、ペットだの一般的な見学マナーの説明ですね。
【料金】大人22シュケル（￥690）、 子ども5-18歳　9シュケル（￥280）
イスラエル人の老人11シュケル（￥345）、 学生19シュケル（￥595）
【開館時間】月～木と土曜日　8時から16時　入場〆切15時
ゲート閉門　16時　金曜日と祝日は1時間早く閉めます
ここがビジターセンター　受付と簡単な売店がありました。
ここでチケットを買いました。
トイレもあり、管理事務所も兼ねています。
かなり広い敷地です。
さすがイスラエル。こんなところにもバリアフリーの設計がされていて車いすでも見学できるようになっています。
後ろの山がその洞窟のある場所です。その手前に看板がありました。
ナハル メアロット　世界遺産サイト　 Nahal Me'arot（ナハルメラト）の先史時代の遺跡(Wadi el-Mughara ワディエルムガラ）は、2012年にユネスコによって人類の進化の世界遺産に指定されました。 ここの4つの洞窟（Tabun、Jamal、el-Wad、Skhul）における90年間の考古学調査により、過去に例のない長期間による文化的なつながりが明らかになり、環境が変化する中でも、少なくとも500,000年の人間の生物学的および文化的進化を表しています。この非常に長い期間の間、同じ中期旧石器時代の文化的枠組みである　the Mousterian ムステリアン時代（250,000〜50,000年前）内に解剖学的にネアンデルタール人と現代人の両方に関わる特徴を表しています。 el-Wad(エルワッド)の洞窟とテラスから取り出された多数の Natufian(ナチュフィア人)の埋葬と初期の石造建築に関わる証拠は、狩猟採集民のライフスタイルから、定住化した農業と家畜の飼育（15,000〜11,500年前）への移行を表しています。
山へのゲート前にあったポスター。この遺跡に直接関わるものではなくて、イスラエルのこの地方の動植物の多様性を表現したものです。日本国内の博物館でもよく見かけますが、改めて他国の博物館でも同じようなものを作っているんだなぁと感じます。
ここが山への入り口ゲート（山といっても目の前ですが）。こういったものの整備もイスラエルならでは。完全に先進国と同じです。
一般的な注意書きですが、一番最初に「INPAメンバーシップカードを持っている人は受付で登録してね」とあります。「INPAってなんだ？」と思ったら、Israel Nature and Parks Authority　רשות הטבע והגנים という、イスラエル自然公園局という講演を管理する政府機関でした。日本でいえば環境省+文化庁+文部科学省みたいなものでしょうか？　この看板の左上にある動物のマーク(ヤギの一種アイベックス)はそのINPAのマークでした。

 

Ｅl-Wad(エルワッド)の洞窟 　מערת אל-ווד
壮大な遺跡に思えるのですが、実はなんのことはない、この山肌の下部に洞窟が２つあり、そこが見学場所になっています。
この看板の奥に、シカのようなオブジェがあるのがわかりますか？
「先史時代の人の溶解性石灰岩を通して作成された洞窟。ナハルメラト自然保護区では、先史時代の重要な考古学的発見とともに、地質学的現象の異常な集中を観察できます」なるほど人類史学ではなく、地質学的なアプローチからの説明です。LINESTONEってのは石灰岩、有名な言葉でいえばカルスト地形を成している地域なんですね。
「私たちが現在いる場所は、約100万年前まで断続的に海に覆われていました。私たちの向かいの崖は、約1億年前に海洋生物の骨格から形成された化石礁です。私たちの前の洞窟は、約100万年前のカーメルの隆起から始まった溶解プロセスによって形成されました。隆起の進行に伴い、河床は深く掘り下げられ、洞窟への入り口が露出しました。遊牧民の狩猟採集民は、ここの洞窟周辺の豊かで多様な植生や動物の生活に魅了されました。洞窟の考古学的発掘調査により、約20万年の人間活動を表す発見が発見されました。発見には、動物の骨、石器、骨器、および人間の骨格が含まれます。約12,000年前の証拠は、遊牧主義から、完全に定住した居住地への移行を示しており、農業の始まりにつながる重要な変化の1つです。」中に書いてあるアルビアンとは、中生代初期の白亜紀の時代を表します。すごく簡単に言えば恐竜の時代ですね。
ふと見下ろせば現在の町の様子が見えます。真ん中に見える大きなものは
ビニールハウスでしょうか？とにかく、農業用の施設です。イスラエルは巧みな農業技術も使って他国に作物も出荷しています。
さあこれがその山です
近づいてみると確かに石灰岩かも。
山の近くには、往時の人の形をかたどったオブジェがありました。
ウチワサボテンの一種。いくらイスラエルが農業ぎ技術を持っているといっても、ここは乾燥した、砂漠地帯にかなり近いところには間違いありません。でも、ここに住むのに適した洞窟があり、飲料水が確保できればかなり良い住居地になったことは想像できます。
そしてこれがその洞窟。
よく見ると印がついています。これは分が人類学というより、地質学的な説明ですね。それぞれの年代の堆積物があるということだと思います。きっと海の生物の堆積物が出てきているのだと思います。
tanua caveの進化の歴史と図で説明しています。
「TANUR CAVE　タヌール洞窟　(TABUN：タブン）
タヌール洞窟はカルスト洞窟です。その名前は、ベーキングオーブン（アラビア語のタブン）を想起させる煙突に由来します。洞窟は何十万年にもわたって、先史時代の文化的遺物とともに堆積物の層で満たされていました。下層の傾斜の低下洞窟の考古学的発掘調査は、最も古く、最も長く知られているシーケンスの1つを公開しており、約10万年前から4万年前まで続いています。 Acheulean、Mugharan（Acheulo Yabrudian）、およびMousterianのさまざまな先史時代の文化のそれぞれは、特徴的な石器に基づいて定義されており、シーケンスを通じて技術の進歩を追うことが可能です発掘調査は、変化に関するかなりの情報を提供しています。特に重要なのが女性の骨格が発見されたこと。その骨盤の形状は進化を物語る重要な証拠です。」
・・・なるほど、とこれを訳していて思ったのですが、カルスト地形になる、つまり石灰岩が浸食されて洞窟の形状になるということは、浸食されるだけの豊富な淡水があるってことですよね。
つまりこの場所は、豊かな動植物という植生、食料の確保が容易だということ、洞窟という物理的な住居があるということ、そして石灰岩を侵食して洞窟を形作るほどの豊かな淡水がある、ということになりますね。なるほど！これだけそろえば人も定住しやすくなるわけです。

 

Gamal(CAMEL)CAVE　ラクダの洞窟　מערת קמל
では別の洞窟も見てみましょう。
「ラクダの洞窟　GAMAL（CAMEL）CAVE
先史時代の10万年から4万年前のムスティエ時代の男性の生計は、動物の狩猟や植物の収集、その他の天然資源で成り立っていました。 ここで再現されているように、狩猟、植物の採集、食物の加工と準備、皮の加工など、さまざまな活動に必要な道具を準備しました。」 とな。
ムスティエ時代とは、ヨーロッパにおける中期旧石器時代に栄えた文化のことで、氷期の時代と一致しているものです。一般には7万5千年前から、9万年前の時代と認識されている時代です。
「ラクダの洞窟はどのように作成されたのでしょうか？
洞窟の天井にある通気孔に注意してください。これはカルストの通気孔で、そこから洞窟が形成され始めました。 二酸化炭素（CO2）が豊富な水が、岩を溶かし、徐々に浸透して洞窟のくぼみを作り出しました。 このタイプの洞窟は「鐘の洞窟」と呼ばれ、洞窟の入り口に見える化石礁の岩の丸いへこみは、石灰質の殻に保存されている微生物の細胞です 」
やっぱり、豊富な水が岩石を溶かしていった痕跡がいろいろなところで見られるようです。
そしてこれがそのラクダの洞窟の内部
いろいろなオブジェが置かれています。
最初、パンフか何かでこれの写真を見たとき「もっとしっかり作れよ」と思いましたが、往時の様子を想像するための屋外の展示物としてはとても良くできていると思います。
「展示物に触らないでね」の表示
なるほど。石器時代のこれがそのまま残っているとは・・・。大したものです。
おそらくここから出土したものと同じ種類の骨などを展示してあると思います。
かなり広く、しっかりした洞窟です。
動物の皮をこうやってなめしたのでしょう。

 

The Nahal Cave (EL Wad)　ナハル（エル・ワド）洞窟　　מערת נחל
では、この遺跡の名前にもなっている　The Nahal Cave (EL Wad)　ナハル（エル・ワド）洞窟　に行ってみましょう。・・といっても先ほどの隣。
「REEF OUTCROP　リーフアウトロープ 波の痕跡が残る路頭
洞窟の壁に沿って、細長い円錐形の殻–ラディスト（厚葉二枚貝）–が密集しているのがわかります。 このグループは、波の影響を受け、光がまだ浸透するエリアの上部に住んでいました。彼らのユニークな成長の痕跡が見られます。強い波に常にさらされているため、波に対する強力な防御の形をとっているのです。その形状は今も元の位置に残されています。他の場所で発見されたものは波によって分離され削られた状態で保存されました。 この層は、少なくとも150 mの厚さの化石礁（崖の底での掘削によって明らかにされただけで）になっており、数百万年の期間にわたって形作られたと考えられます。」
「ナハル洞窟（EL WAD） 洞窟内の最も古い遺跡は、中期旧石器時代（ムステリア文化）に属しています。 その後、オーリガニア人がここに定住したと考えられています。前期旧石器時代の文化（40,000-20,000年前）があり、そして 約8000年の空白の歳月を経て、洞窟はナチュフィア文化の人々によって、再び定住の地とされました。 ナチュフィアの遺跡が洞窟の内部とその前のテラスで発見されています。」
奥まった場所に向かうと何やら紫色が・・・・
なんとライトアップされた演出でした。
最深部に行くと、プロジェクターに映像が映し出され、ここの紹介をしていました。
よく見ると洞窟を傷つけないように遊歩道がありました。
なるほど、一つのエンターテインメントとして演出している、という訳です。
上を見ると明らかに人工的な黒いものが・・・。
太古の昔、ここで炊事をしていた様子が生き生きと伝わってきます。

 

ナトゥフィアンの埋葬地

「自然の文化からの発見 1万2300年～1万500年前　ナチュフィアの文化は、人類の文明の発展における重要な段階を表しています。 この間、先史時代の人々の社会構造とライフスタイルに大きな変化が起こりました。 彼らは野生の生物の狩猟と、穀物の集中的な収集に基づいた経済で恒久的な居住地に住み始めました。 この時期の遺跡では、考古学者が建造物の遺跡に中に、大きな墓地、石造りのモルタル、多数の鎌の刃、美術品を発見しています。 このいくつかの例は洞窟前で見ることができます。
ナトゥフィアンの埋葬について。これは発見された約80体の骸骨の1つのレプリカです。 体が湾曲して埋められた位置と、頭蓋骨の周りのデンタリウムの貝殻のバンドに着目してください。 岩盤の機能は、不確かですが、おそらくナチュフィアの墓地と葬儀に関係していると思われます。テラスの壁は、モルタルを使用せずに普通の石で構成されていました。」
・・・と洞窟から、ビジターセンターへ戻る途中にこんな場所がありました。
ナトゥフィアンの埋葬地（コピー）
確かに住居の近くに墓地があるのは納得です。衣食住の様々な痕跡が残っているので、この地が世界遺産になったのも道理、と感じます。
きっと、何か思うところあって、ここに埋葬したのでしょう。
テラスの壁。先の説明によると、モルタルでなくて普通の石で装飾されたとのことですね。
・・・・といろいろなものがあった遺跡です。小規模ですが見ごたえのある場所でした。
・・・ふと駐車場で見上げるとこんな木がありました。
足元には、恐竜のかぎづめのようなものがびっしり。おそらくマメ科の植物の種子だと思われます。
太古の昔の人々も、こんな植物を利用したのでしょうか・・・。

 

【レンタカー実践例　イスラエルでプジョー3008を借りてみた
移動は車を借りて爆走してしまいました。
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