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 洗礼の地「ヨルダン川の向こう側、ベタニア」 (アル=マグタス)
Baptism Site “Bethany Beyond the Jordan” (Al-Maghtas) 
موقع المعمودية "بيت عنيا وراء الاردن" (المغطس)

 


ヨルダン・ハシミテ王国 المملكة الأردنيّة الهاشميّة Hashemite Kingdom of Jordan にある、洗礼の地「ヨルダン川の向こう側、ベタニア」 (アル=マグタス) Baptism Site “Bethany Beyond the Jordan” (Al-Maghtas)です。ガラリア湖から流れ出て、死海にそそぐヨルダン川。そのヨルダン川はイエス・キリストがヨハネにより洗礼を受けたとされる非常に重要な場所です。戦乱により遺跡調査などは後手にまわっていましたが、ここ数十年のうちに様残なローマ時代・ビザンツ時代の遺構が発掘され、一般公開されるようになりました。
【国境問題・・・】
 ヨルダンのこの場所は通称 アル・マグダス Al-Maghtas المغطس‎ といいますが、その対岸はカスル・エル・ヤフド Kasser/Qasser al-Yahud/Yehud קאסר אל יהוד‎‎ といい、パレスチナのエリコ県 Jericho أريحا にあたります。しかしエリコ県を実効支配しているのはイスラエル。つまり実質的にはここがヨルダン-イスラエルの国境となっています。
 自分が今回訪れたパレスチナ側のアル・マグダスは、遺跡発掘から公開までが比較的速く、2002年には一般公開されました。パレスチナ(イスラエル)側のカスル・エル・ヤフドも、1967年の第三次中東戦争までは公開されていたのですが、それ以降は一般人の侵入を固く閉ざしていました。(唯一の例外として1985年以降ならば、軍の監視下でならローマ・カトリック、正教会がそれぞれが規定日に公現祭/神現祭を祝うことだけは認められていたようです)。そして2011年になって、ようやく観光客向けに一般公開されました。
ただし、これほど価値のある遺跡に関わらず、実際に訪れる人は少ないように思います。(「地球の歩き方 イスラエル版」にも何の言及もなかったように思います)。でも今、一般人が、ヨルダン川の川面を落ち着いて・正式にみられる場所というのは、ここしかないと思われます。どちらの国からも訪れることができますが、どちらから訪れるにせよ、検問と厳しい監視の中の訪問になります。
「地球の歩き方 ペトラ遺跡とヨルダン編2019-2020」にはペトラ関連の記事が61ページにわたってあるのですが、この場所の説明は1ページの1/4ほど。確かに地味で、訪れ方も面倒で、訪問意欲をそそられる場所ではないかもしれませんが、いろいろな意味で非常に貴重なものだと思います。世界情勢の厳しさとは裏腹に、ゆったりと静かに流れるヨルダン川の褐色の水面が、あまりにも対照的で非常に印象深い場所でした。