トップ > 世界遺産・エッセイ > エッセイ > ロシアの交通事故が多い理由
ファイルにまとめてあります。ここからダウンロードしてください
|
---|
なお、すべての写真にはクリックすると拡大するハイパーリンクが埋め込んであります。ネットにつながった端末でお読みいただくとそのまま写真が拡大表示されますのでご活用ください。
|
ロシアと言えば、「おそロシア」の枕詞と共に、常にファンキーな話題を提供してくれると話題の国、ロシア。特にネットが発達してからは、写真やドライブレコーダーの動画から、ロシアの恐ろしくも特異な世界観が話題になっています。特に、ウオッカが大好きで、交通事情も悪いとなれば、交通事故は当たり前、と考えられています。自分もそんな一人でした。
2019-2020年の年末年始。ふとしたことからロシアを車で運転する機会がありました。いわゆる普通の日本人が、冬のロシアを運転することに、それなりに勇気が必要でしたが、なんとか楽しいドライブをしてくることができました。そんな時、「なぜ、ロシアでは交通事故が多いのか」理由が分かった気がしました。
ここでは、素人だからこそ感じたロシアの運転事故率が高い理由をまとめてみました。
題して「私が感じたロシアでの交通事故率が高い原因 全8項目」。
1『交通量に対して道路の容量が少ない!』
やはり都市人口、そして車の所持率に対して道路の許容量が少ないのです。モスクワの幹線高速道路は非常に広いのですが、それでも収容できないほどの車が走っています。理由の一つは、車以外の交通機関が乏しいことでは?と思います。モスクワ市内は地下鉄網が発達していますが、その近郊となると、途端にローカルチックな鉄道しか走っていません。つまりちょっと離れたところに行くにしてもやはり車がベストになるわけです。こうなると交通量は増えるばかり。
2 『社会的インフラの弱さ』
簡単に言うと、目の前に突然工事区間が現れて、車線がなくなることがよくあります。 それも日本のように事前に、丁寧に、あちらこちらで告知があるわけでもありません。突然、車線がなくなっているのです。こうなるとその車線はもちろん、隣の車線も突然混雑し、車の流れが極端に変化します。それについていけなくなった車が事故にあう・・・。そんな感じです。
3 『車の性能差が激しい』
ソビエト崩壊後、着実に民主化を進めてきたロシア。富裕層も生まれ車も西側の高性能車や韓国のアジアンカーなども増えてきました。いまや西欧と変わらない道路風景になってきているのですが、やはりソビエト時代の車も走っています。写真右側の赤いLADA 1500シリーズのような30~40年前の車もそこそ走っています。大型車にも相当古いものがあり、ほぼ「停止しているの?」と思うような速度で喘ぎ喘ぎ荷物を運んでいる車もあります。これが、ポルシェやメルセデスと一緒に走っているのですから、車の流れが不均衡になるに決まっています。突然の低速車に驚き、事故にあう・・・。というものもありそうです。
4 『ドライバーの「とにかく前に進みたい気持ち」が強い』
写真は、ある支線からモスクワ環状道路МКАДへの合流点なのですが、何らかの理由により、目の前のМКАД本線が大渋滞を起こしていても、とにかく前に進みたいので、車線がぐちゃぐちゃになっています。目の前の白い車は車線を変更し左に行っていますが、右側の赤いVOLVOもこちらの車線、さらには隣の車線も狙っています。
結局、自分もかなり割り込んで、左に入れてもらいました。こんなせめぎあいが合流地点で延々と続きます。とにかく「前へ前へ」「入れて入れて」の気持ちが出まくっています。ただし、こうしないといつまでも進めないので、結果的に自分も「前へ前へ」の仲間入りをしていました・・・。
5 『モスクワの一部はひたすら渋滞するくせに、少し郊外に出ると、車がなくて100km以上で快走できる』
例えば、左の写真の左車線はなんらかの原因でずーーーっと渋滞していますが、自分の車線は快適に100km/hオーバーで疾走できます。
この緩急の差が激しすぎて、いざ渋滞、いざ交差点となると、心と車が対処できずぶつかってしまうような気がします。
6 『飲酒運転』
この電光掲示板。「前が詰まっていたらスピード落とせ」という意味だと思います。他に、写真には撮れませんでしたが「飲酒運転はやめましょう」という標識もありました。とはいえロシアで飲酒運転が法律で禁止されたのは2010年。もっというと、2011年までロシアの法律ではビールは酒ではなく「食品」でした。ロシア人で毎日晩酌をする人の割合は意外と少ない、との統計も見たことがありますが、 飲酒運転に対する寛容度は日本の比ではありません。
7 『高い巡航速度』
最高速度は100km/hのところも多いですが、実質的な巡航速度は110km/h程度でしょうか?追い越し車線は120km/hでも「どけどけ」とされます。いずれにしてもロシアの標準的な速度域は、市街地・郊外共に日本の数割から倍近く高い気がします。それだけ高ければ、事故率も飛躍的に高まります。
8 『厳しい自然環境』
ロシアの冬は筆舌に尽くせないほど厳しく、寒い日々が続きます。そしてその寒さは水を凍らせ、道路やコンクリートの亀裂に入り込み、暖地では考えられないほどインフラを急速に劣化させていきます。加えて深い積雪は、立っている支柱や電柱をも曲げる力を持っており、春先には大きく曲がった鉄骨や電柱が非常に多数生まれてしまうことになります。つまり、暖かい地方の方には想像もつかないほど、冬の寒さはインフラを加速度的に劣化させるのです。結果的に道路環境は極めて悪くなり、事故を誘発する原因にもなってきます。
・・・とまあ、いろいろ考えると交通事故が他国より相対的に高くなるのはある意味必然のような気もします。解決方法はいろいろありそうですが、とにかくあの広い国土では管理が行き届かなくなるのも当然です。
「ロシア人は運転が荒いから」という一言では片づけられないほど、様々な要因があっての事故率なんだと感じました。そんなことも考えながら、ロシアのことを理解してもらえればいいな、なんて思いました。ちなみに、自分の感覚では、1時間に1回は事故に遭遇した気がします。つまり半日走っていると6回は事故を見ることになります。統計上の事故率はよくわかりませんが、体感的には、非常に頻繁に事故が起こっている印象でした。
でも・・・慣れると快適なロシアのドライブです。あまりお勧めはしませんが・・・。