パンテオン

パンティオンとは「すべての神々の神殿」という意味を持つ神殿で、最初に建てられたのは紀元前27年だが、AD80年に焼失。現在残っているのはハドリニアヌス帝によって再建されたものである。再建とはいえ118年から125年に作られたものである。つまり1900年前のコンクリート建築。
このパンテオンは、紀元前3世紀以来、ローマ人が改良を重ねてきたコンクリート技術に、アーチという美しくも強い構造設計の賜といえよう。想像される工法は以下の通り。まずドーム屋根の内径の形に添って精巧な木製の仮枠を組み上げ、そこにコンクリートを流す。巨大なドーム屋根の重量を分散するために、床からドーム頂上までを5層に分け、下部は煉瓦の断片、中部は煉瓦の断片と凝灰石、上部は凝灰石と軽石、というふうに上部にいくほど軽くなるように作られた。さらに軽量化および強度を増すため、格間という模様をつけた。またドームの重量を支えるため、ドームを支える壁の厚さは6.2mもあり、さらに重量を分散するため、壁の内部には煉瓦のアーチが組まれている。


広場から正面を見ると、神殿のような柱が立っているアテネの「パルテノン神殿」の小型版のような印象を受ける。ところがところが、実際はまったくちがうのである。確かに正面は、ファザード(神殿)だが、その後ろには、巨大かつ緻密なドームがある。



内部の様子。 高さ43.3mのコンクリート建築とは現在にとって見ればたいしたことのないものだが、1900年前の建築としてはもちろん、ただのコンクリート建築としては世界最大のものである。「ただの」と言った意味は、現在の建築は「鉄筋コンクリート+α」の場合が多いからである。押される力には強いが、引っ張るからには弱いコンクリートと、押される力には弱いが、引っ張られる力には強い鉄筋が組み合わさり、お互いを補強しあっている上に、耐震補強などの場合FRP等の化学繊維などを織り交ぜ、強度を維持しているのが現代の建築だからである。




直径44m、高さ22mというドームは、現在でさえもその建築方法はおろか、なぜ今も建っていられるのかすら明確になっていないという。