森林地帯

「かつてこの島には多数の森林地帯があった。そこには大木が茂り、人々は大型のカヌーを作って沖へ出たり、モアイを移動させるときのそりを作った」というのが一般的に言われているかつての島の様子である。ところが現在、森林地帯といえる場所はごくわずかしかない。他は牛や馬が草を食む牧草地のような草原が広がっているだけである。
かつて「イースター島=地球の縮図論」が様々なところで展開された時代がある。森林(=様々な資源)を無造作に使い果たすと、文明自体が破滅してしまうと言う説である。確かにイースターの地層を彫ってみると、大昔の地層からイルカの骨が出てきたという。そのうち、小魚しか出なくなり、そして新しい地層からは人骨がでてきたという。イルカを捕るためには、沖合に出る必要があり、沖合に出るためにはそれ用のカヌーを作らなくてはならない。つまりかつてこの島には大型カヌーを作れるだけの大木がたくさんあったということだ。そして人々はそれを使い尽くし、岸から小さな魚だけを捕らなくてはならなくなり、やがて食糧難に陥り、人を食べる習慣もできた・・・という説もある。「地球環境破壊は、古代文明が船を造り始めたときから始まった」という説もあるくらいだが、この島のほんの僅かの森林地帯から示唆されるものはたくさんある。

ヴァイテア付近の森林地帯

「森林地帯が無くなった」とは言え、島から全ての木がなくなったわけではない。もちろんハンガロアの村人の庭先にも、島中のいろいろな場所にも木は立っている。ただし、その木が密集して森を作っている場所は大変少ないことは確かである。僕が島を歩いて「森林地帯だな」と感じた場所は二カ所。ハンガロア村からナウナウに向かう舗装されたメインストリートの途中にある「バイテア」という集落には森林地帯がある。

ヴァイテアの森林地帯

道路を走っていても「これから森林地帯だからスピードを落とせ」という表示もある。確かに暗い森の中を少しくねくねしながら道は進んでいる。知識が無くて申し訳ないが、この木がこの島古来のものか、それとも近代になって植えたのかはちょっとわからない。

オロンゴに向かう道からハンガロア方面を見た図

手前に見えるのは低木で森林地帯ではない。高い木が密集しているのは真ん中あたりの筋になっている場所である。ちょうどマタヴェリ地区からオロンゴに向かう道沿いに木が生えていることになる。他の緑に見える部分は、草地か低木が茂っている場所になる。こう見ても、この島にある森林は本当に少ない。